ヘッドホンを付けてパソコンの画面を眺めている時だけが、俺にとって唯一の心安らぐ時間だ。
今もそうしている。
(もうこんな時間か……)
時計の針が指しているのは1時。
まだまだ目が冴えているので、高ぶっている神経を落ち着かせるために温めた牛乳でも飲もうかと考えた。
寝ているであろう家族に一応は気をつかって、そっと部屋を出る。
俺の部屋があるのは二階。
一階に下りて台所でホットミルクを作るつもりだったのだが……。
(ん? 珍しいな……)
弟の部屋から明かりがもれていた。
双子の弟である陸人(りくと)は、スポーツマンで優等生。
部活の朝練もあるから、こんな遅くにまで起きていることは珍しい。
(寝落ちか?)
俺じゃあるまいしと思いながら、足音を忍ばせて弟の部屋へと向かった。
部屋の前まで来ると、閉め忘れたのであろうごくかすかに開いた扉の向こうから、小さな声が聞こえてきた。
「や、やっぱり……こんなのまずいよ、有紗」
嫌な汗が滲んでくるのを感じながら、俺は扉の隙間へ顔を近づけた。
俺は自分の目を疑った。
目の前で繰り広げられている光景に唖然として、金縛り状態に陥ってしまう。
「ねえ、陸人……。気持ちいい? 私のおしゃぶり、気持ちいい?」
兄と妹とでこのような行為におよんでいるのを目の当たりにして、苛立ちや嫌悪感がこみ上げてくる。
しかし、本当は自分でも分かっているのだ。
俺が苛立っているのは、兄妹間での禁忌を見てしまったからではない。
双子の弟と、ひとつ下の妹とが、ここまで深い仲になっていたからだ。
「親に見つかったら……どうするんだよ……。それに、二階には兄さんの部屋だってあるんだから……」
自分の男性器を丸出しにしたまま優等生ぶろうとしているのだから、双子の弟とはいえ反吐が出る。
「海人? あんな奴、どうせヘッドホン付けてエロ画像ばっかり見ているから、絶対にばれっこないよ」
俺のことをしゃべっている間も、有紗は無我夢中といった感じで陸人の亀頭を吸いむしゃぶっていた。
「海人なんて関係ない。私は好きなのは陸人だけ……」
俺の中で何かが弾けた。
男性器をぎちぎちに勃起させている下腹部から、黒い情動が胸のあたりまで逆流してくる。
(そっちがその気なら、こっちにも考えがある)
俺は足音を忍ばせて部屋まで戻り、スマートフォンを手に取った。
誰かと話をするわけでもなく、携帯ゲーム機と化しているスマホだが、こういう場面で役に立ってくれるとは思ってもみなかった。
細く開いた扉の隙間から、二人の様子を隠し撮りしてやる。
さて……と。この画像、どう利用してやろう?
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